わたしは人と会ったとき、まずはじめに、ものすごくふつうに声をかける。たとえば、「天気いいね」とか、「電車で来たの」「もうお昼食べたんですか」といった言葉をいう。わたしはこういう、あたりまえすぎるやりとりが、わりとすきである。以前は、こんなにありきたりのことをいうと、ただのばかだとおもわれないかと心配したこともあったが、あいさつや会話のとっかかりはふつうでいいのだと気がついてからは、「今日は風つよいね」とか、「あたらしい靴、買ったの」とか、そういうことを平気でいうようになった。 こういった言葉のいいところは、相手に対してとても自然なかたちで、あなたのことを気にしていますよ、というメッセージが伝わることである。わざとらしいところもなく、ごくふつうにコミュニケーションがとれる。そこがいい。考えてみると、会話のとっかかりというのは、わりとむずかしいものだ。なにか気のきいたことをいわなくてはいけない