1960年代前半、東京五輪に沸く首都を活写した開高健の『ずばり東京』で、開高が描かなかった街・秋葉原。いまやJR東日本で9位の乗降客数を誇り、外国人観光客も多く呼び寄せる秋葉原は、どのように発展してきたのか。ノンフィクションライター・神田憲行氏が、その軌跡を辿る。 出典:「文藝春秋」2017年9月号・全3回 しかし開高の「ずばり」に、秋葉原という文字は一度も登場しない。これは今の感覚からするとけっこう不思議なことではないだろうか。 この連載が開高健の「ずばり東京」をモチーフにしていることは読者のみなさんもご存じだろう。1960年代前半、東京五輪開催直前の東京のあちこちを開高が歩き回った名作ルポである。 現在のJR秋葉原駅の1日の乗降客は24万6000人以上、JR東日本管轄の駅の中では9位に入る。上野や有楽町などよりも多い(2016年度、JR東日本調べ)。また「電気街」「アイドル」「アニメ」