2011年01月24日22:24 カテゴリ本科学/文化 戦後知の可能性 タイトルの「戦後知」とは、編者によれば「敗戦直後から日本社会の現実に向き合って、社会の変革にかかわろうとしてきた啓蒙的知識人の系譜」だという。この自己規定にもあらわれているように、本書は丸山眞男や竹内好など10人の「進歩的知識人」を取り上げて、その再評価を試みたものだ。 論文集としては成功しているとはいいがたいが、ざっと読んで印象的なのは、対象となる「啓蒙的知識人」が共通にマルクス主義の強い影響を受けていることだ。もっともその影響の希薄な丸山でさえ、「講座派的近代主義」の一種ともいえる。吉本隆明や網野善彦はマルクス主義者であり、村上重良は共産党員だった。もっとも若い世代の柄谷行人でさえ、マルクスの影響を脱却できていない。 もう一つの共通点は、「西欧近代」に対するあこがれと反発のアンビヴァレンスだ。丸山のようにもっともモ