児童精神科医に憧れていた。 都内の中高一貫の女子校を経て、関東の某国立大医学部を卒業。 研修医を終えると、都内の医局に入り、念願の児童精神科医の仕事を始めた。 でも、地獄だった。 診察対象の児童もその親もガラが悪かったりして、一言でいうなら「社会の底辺」 これまでの人生で関わったことのない人たちだし、関わることを避けてきた人たち。 トー横キッズもどきとその親。 とても自分の手に負える代物ではなかった。 だから、普通の精神科医になろうとした。 そしたら、弱者男性の相手をしないといけなくなった。 精神疾患があり、経済的にも恵まれていない、低学歴の弱者男性が、「つらい、つらい」と訴えるたび、自分のなかの大切なところが犯されているように感じた。 まるで歌舞伎町の立ちんぼになったような気分。 精神科医も続けられなかった。 今は厚生労働省の技官として医療行政に携わっている。 仕事相手は、みんなまともな