いま、きみがぎゃんぎゃんと顔をバッテンにして泣いたり、おとうさんのひざの上でキャッキャキャッキャと笑ったり、わたしのおっぱいをフガフガいっしょうけんめい吸ったり、やさしい保育士さんに抱かれてホワホワ眠ったり、しなもんの毛をくしゃくしゃとつかんだりして、いろんなことを経験しても、きみはすべて忘れてしまう。そう思ったとき、一瞬、お母さんはむなしい気持ちになりました。でもすぐに、それはちがうのだ、と思いました。いっぱいに愛されて過ごすいまの時間が、きみの心の種の芯みたいなものを作ってる。近い将来、きみが芽吹いて葉を出して枝をのばして、空高く、すっくと立つまっすぐな大樹になるためにいま、この瞬間、瞬間があるんだね。お母さんは、広いこの世に飛び出す前のきみのことをやわらかくあったかくしっとりと包む土のような愛情でもって、きみのお世話をしたいと思う。いまのきみとお母さんのふれあいが、きみの記憶にぜんぜ