「きりんさんが好きです、でも……ごめんなさい。やっぱり言えない」 きりんさんはその夜も悶々としてまんじりともせず夜を明かした。少女の言葉の先が気にかからないはずがない。これまでに少女と交わした会話や少女の表情を記憶にある限りすべて並べ、言い聞かせるように確かめる。 確かに俺が彼女を愛しているほど、彼女は俺を愛していないに違いない。けれども俺の知る限り、彼女は他の誰をも熱烈に愛してはいない。そして、愛してはいないにせよ、彼女に最も近しいのは俺だ。だったら俺はそれで満足ではないか。きっと彼女は、好きだけれど愛せてはいないことを謝ろうとしていたのだろう。罪ではないというのに。なんと心やさしい少女であることか。 きりんさんは少女の出演するCMを偶然見かけて愕然とした。 「きりんさんが好きです、でも、ぞうさんの方がもーっと好きです」 何のためらいもなく言った。誰に訊かれてもいないのに、自ら。 ぞうさ