『げんしけん』八巻を貪るように読んだ。いい話だなぁ。『げんしけん』は、ぬるオタコミュニティのネガティブな面を丁寧に除去し、楽しさと可笑しさに焦点をあてて描写したファンタスティックなオタク漫画だが、この八巻における“荻上恋愛物語”もまた、理想的なオタク物語に違いなかったと思う。 この、“荻上恋愛物語”をかいつまんで説明すると以下のようになるだろうか。 オタクならではのトラウマ体験を刻み込まれた荻上は、オタクとしての自分に自己嫌悪を抱きつつも、どうしてもコミケ通い・同人趣味をやめる事が出来ずにいる。そのため、自分だけでなくオタク趣味・オタク仲間に対しても屈折した勘定を抱え続けている。 しかし、大学の現視研で異性(ささやん)に出会い、不器用ながらも惹かれる荻上。最初は頑なな彼女だったが、ハードなやおい趣味のカミングアウトと承認を通して、遂に過去のトラウマを克服しはじめる。オタクとしての自分自身に