映画「男はつらいよ」の観客のなかには、柴又あたりに車寅次郎のモデルが実在していて、実際に似たようなエピソードを残していたのを、山田洋次監督が、脚本にしたと思っている人もいるだろう。 車寅次郎というキャラクターは、山田監督がつくりあげたものである。その場合、車寅次郎が先だったのか、それとも渥美清にあわせて寅次郎が誕生したのか。 きのう、参考にした単行本『拝啓 渥美清様』で、「なぜ『男はつらいよ』の主役を渥美清さんにしたのですか?」という小学5年の女の子の質問に対して、山田監督はこう答えている(山田監督に対する読売新聞社のインタビューの質問は、渥美清の母校、板橋区立志村第1小学校の児童と、都内の読者から募ったものだという)。 「最初に渥美清さんがいて、その渥美清さんという素材をどう生かせば、一番魅力的な映画ができるかって考えるうちに、あの寅さんというキャラクターがうまれたということです」