閑話休題 情に棹させば流される 釣れ連れ草125 お馴染み漱石先生の草枕、その冒頭の一節をよく覚えている。「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」 棹をさす、という語は、流れに乗って進む意なのだが「流れに逆らう」との誤解が多いという。ところで、漱石はこの智、情、意をマイナスイメージで書き連ねている。智に働けば角が立ち、意地を通せば窮屈なのは、すんなり理解が出来る。問題は「情に棹させば流される」なのである。彼は「感情の赴くままに突き進むとどんどん流されてしまいますよ」と、言っている。しかし読むほうは、「人の感情に逆らえばひどい目に会うよ」と受け取ってしまう。結果は同じなのだがプロセスがまるで違う。しかし、今日の話題はその続きなのである。 「住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。どこに越しても住み