※本記事は、『アニクリ vol.12 ジャンルのリフレーミング』(アニメクリティーク刊行会、2021年)所収の「母と子の物語──「ラブコメ・ヌーヴェルヴァーグ」についてのラフスケッチ」を大幅に加筆・修正のうえ、転載したものです。 文:てらまっと 以前、なかば冗談で「ラブコメ・ヌーヴェルヴァーグ」という言葉を提唱したことがある。「ヌーヴェルバーグ(Nouvelle Vague)」とは本来、フランス語で「新しい波(New Wave)」のことだ。1950年代後半から60年代にかけてフランスで勃興した新たな映画の潮流を指す言葉で、ジャン゠リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォー、エリック・ロメールなど錚々たる映画監督が含まれる。 「ラブコメ・ヌーヴェルヴァーグ」もまた、ラブコメ漫画やアニメにおける「新しい波」を名指そうとする試みだった。さしあたって私が念頭に置いていたのは、たとえば『からかい上