社会的弱者へのまなざし 「弱い者いじめはするな」と大正生まれの父に直接言われた記憶はない。しかし、私は、旧制中学校ではない高等小学校卒(尋常小学校6年卒後に高等小学校3年修学、15歳で卒業)の父の態度(人生)から何故かそう学んだように思う。私は子ども心に「強い子とのケンカはいいが、弱い子とのケンカはダメ」という家訓(家庭教育)を勝手に身に付けた。 もうひとつ、なぜか父は「人様に迷惑をかけるな」とは言わなかった。普通、子育て中の親がよく言う「人様に迷惑をかけるな」には、「人様から迷惑をかけられるな」という裏メッセージが含まれている。私はいつのころからか、この言葉に「よく知らない人とは関わるな」という「排除のまなざし」を感じるようになっていた。今にして思えば、戦後のレッドパージと国家公務員法成立前夜の激動期に労働組合に関わり、その後家族を養うために離脱(転向)した父は、「人は一人では生きていけ