熊本との県境に位置する鹿児島県出水市は、日本最大のツルの渡来地として知られている。その出水で、ツルを描き続けた画家がいる。宮上松岳さん(1914-1988)だ。 毎年10月中旬から12月にかけて、はるかシベリアから出水までやってきたツルは、翌年3月頃まで越冬する。長い果て旅路の果てに羽根を休め、エサをついばみダンスをするその姿は、出水の冬の風物詩である。 私が松岳さんの絵に初めて出会ったのは、出水市の山深い場所にある大庭園「東雲の里」だ。園主の宮上誠さんは、看板と陶芸の仕事をしながら46歳の時に山を購入。「ここに最高に美しい庭園を作ろう」と20年以上の歳月をかけて開墾し、花や木を植え、石畳を敷き、園内に蕎麦屋や陶芸窯を設けて、一大庭園を築き上げてきた。 ▲初夏には約10万本のアジサイが山を彩る。「東雲の里」は日本各地のみならず海外からも人が訪れる出水市の観光名所だ そんな「東雲の里」園内に