「洋本」「和本」 洋装本の登場によって、初めて広告や目録に書型とは異なる書物の形が記載されるようになった。その新しい形が「西洋仕立」といった「西洋」を冠した言葉によって記されたことによって、それまで「日本」で流通していた書物の形もあらためて名称化される。 市岡正一編輯 ○漢語挿入/新選玉篇 日本仕立上下二冊○西洋仕立一冊○金二円五十銭(中略) 出版書林 甲府常盤町四番地 内藤伝右衛門 売弘支店 東京神田豊島町三丁目 山添栄助 (『東京日日新聞』、1877.6.1) 『漢語挿入/新選玉篇』は和本と洋装本の二つの形態で刊行されているが、「西洋仕立」の洋装本に対して和本は「日本仕立」と記述されている。この「日本仕立」は和本二冊本のことであり、「西洋仕立」は和本と同版の楮紙袋とじ木版を背革クロス表紙丸背の洋装本一冊に仕立て直したものである。「日本仕立」は、甲府の書肆内藤伝右衛門が何度か使用し