考える人 足早く過ぎゆく人々の靴音と、上り電車の発射を告げるベルを聞きながら、今私はここにいる。 下半身を丸出しにし、かのオーギュスト・ロダンが、ブロンズにありったけの情熱と魂と命とを吹き込んだ「考える人」の如きポーズをとりながら、今私はここにいる。 午前8時10分。 私の地元、神奈川のクソ田舎から電車で小一時間ほどの場所にある、県内では中規模程度の大きさを誇るターミナル駅に降り立った私は、急転直下の腹具合からもたらされる苦悶の表情を顔にへばり付け、尻穴に余計な力を加えないよう、ヨチヨチ歩きの幼児の如き足取りで、ようやくここにたどり着いたのであった。 ホームの階段を登りきった、改札口まであとホンの少しのところ。 そにはまるで、神が両手で迷える子羊を優しく迎え入れてくれるかのように、その門戸を開いて待ってくれていたのだ。 そう。その輝かしい場所とは、まさにトイレなのである。 最近改装されたば