オーウェルの『一九八四年』(Nineteen Eighty-Four, 1949)の新訳が出たのでさっそく購入し、一読した。ジョージ・オーウェル『1984』(田内志文訳、角川文庫、2021 年)である。以下に「翻訳レビュー」を記す。ただし、一度読んだだけ(しかも一気読み)であり、以下で指摘する箇所をのぞけば、英語原文と細かく照らし合わせて吟味したわけではないので、本格的な評というよりは「感想文」に近いものであるということをまず断っておく。 表紙カバーはシュルレアリスムの画家ルネ・マグリットの油彩画《男の息子》(Le fils de l’homme, 1956 年。《人の子》とも訳される)を使用している(冒頭の図版、右下を参照。カバーデザインは須田杏菜)。低い石壁、水色の海と曇り空を背景に、白シャツに赤橙のネクタイ、ディムグレイの山高帽にコートという出で立ちの男性が直立しているが、目鼻口が葉