名作誕生の裏には秘話あり。担当編集と作家の間には、作品誕生まで実に様々なドラマがあります。一般読者には知られていない、作家の素顔が垣間見える裏話などをお伝えする連載の第20回目です。今回は、大ベストセラー『恍惚の人』の著者・有吉佐和子さんとの秘話。『和宮様御留』が執筆されるに至った背景を、担当編集者だけが知る目線で語ります。 水口義朗よしろうさんという、とても変わった編集の先輩がいる。水口さんは、私の高校の先輩でもあるのだが、中央公論社に入社後、「中央公論」や「婦人公論」や「小説中央公論」の編集に携わり、副編集長や編集長になったりして、テレビ朝日のワイドショー「こんにちは2時」のキャスターを8年間も務めたあと、復帰して「婦人公論」の編集長を務めている。この経歴を見るだけでも、奇人と言ってよいほどの人であることが分かる。90歳になろうかという歳で、いまも現役の文芸評論家として、編集者でなけれ