お笑い芸人・オードリー若林正恭の旅行記『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(KADOKAWA)が、このたび発売から3年の時を経て文藝春秋から文庫化された。文庫版では新たにモンゴル編・アイスランド編・コロナ後の東京編の3編が追加され、すでに単行本を読了した者にも新たな読み応えを感じさせる一冊となった。 文庫増補分も含めたこの作品の魅力と、これからの時代の「中年」の生きるべき道を書店員の花田菜々子が解説する。 旅文学に必要なのは、自らの内面を見つめる力 この本はオードリーファン、お笑いファンだけでなく、多くの人に手に取ってほしい一冊である。その理由は単純明快で、お笑い芸人のエッセイという枠を超えて優れた紀行文であり、長く読み継がれるべき名著だからだ。 この本を貫く一番の魅力は、中学生のような瑞々しい視線だ。羽田空港でのチェックイン、機内、飛行機が到着するまで……のまだ何も起きていない段