あんた、コーシーは好きなの 土曜日早朝のコーヒーショップに客はほとんどいない。軽音楽が店内を華やかな雰囲気にしている。 「おまちどうさま」 徹ははなえと自分のコーヒーをトレーに乗せて運んできた。 「温泉は午前10時過ぎから入れるようだから。着く頃にはいい時間になると思うけど、ま、急ぐことはないから。着いたら周りを少し散歩でもしようか」 徹がコーヒーをはなえの方に置いた。 「砂糖は入れるでしょう」 徹ははなえのコーヒーカップにステックシュガーを入れた。そういえば、徹も数十年前には、若かった多恵子と喫茶店でコーヒーを飲んで将来について話をしていた。まだ希望に満ちていた頃だ。 「コーヒーはおいしいね。はなえさんは好きなの?」 「よく飲むよ。インスタントだけど。あんたはどうなの?あったかいコーシー」 「コーシーって・・・・好きだよ」 徹ははなえのジョークに気づいた。たまに冗談を言うのだ。 「うーん