2014年のロシアによるクリミア併合後、NATO(北大西洋条約機構)は、その最優先課題として、クリミア半島「周縁部での通常抑止態勢の強化」*1を挙げました。さらに、「核抑止力に配分される予算などの資源を増加させることには疑問」*2を呈するなど、クリミア半島での危機は、核戦争に怯えた冷戦時代の緊張を国際社会に広く思い出させるには至りませんでした。 しかし、先月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻において、核保有国ロシアが非核保有国ウクライナを核威嚇しただけでなく、他の核・非核保有国へも核兵器の使用を辞さない構えを見せたことは、冷戦後の大国間政治の根幹に衝撃を与えるものです*3。 核保有国による非核保有国への核威嚇という情勢を受け、我が国では、核共有(ニュークリア・シェアリング)が再び脚光を浴びています。本稿では、核共有に関して、膨大で精緻に練り上げられた抑止論に多くを割くことはできま