耳が聞こえない両親と兄と、家族で唯一の聴者の主人公ルビー。 わたしは観終わって映画館を出るのが恥ずかしいくらいに涙を流して目を腫らしたけれど、ほかの人はなにに涙を流すのか、観た人の細かな感想や感情の動きを知りたくなった。 わたしはあまり大きくない街で育った。父と母、兄とわたし。そこに視覚障害のある祖父とうつ病の祖母、知的障害のある伯母(父の姉)が加わった家族だった。わたしは家族の話をするときにこの特徴をわざわざ説明することは少ない。それは家族のそれぞれの特徴でわたしの特徴ではないから。 楽な幼少期ではなかった。 ひとりひとりのエピソードを書いていたらキリがないほどいろんなことがあった。中でも、知的障害を持つ伯母は難しい存在だった。わたしが生まれてすぐの頃、伯母はわたしを人形のように扱って伸びてもいない爪をまだまだふにゃふにゃで柔らかい赤ちゃんの指先の皮膚まで一緒に切って血だらけにしたり。泣