DNAを単にデータ保存装置と考えるなら、それが保存するデータは、生物情報です。ヒトでいえば30億の文字があり、2万個の遺伝子をもっています。古遺伝学とは、はるか昔に死んだ生物のDNAを研究する学問です。この技術が開発されたのはここ10年ほどで、本格的な研究はまだ5年ほどという新しい分野です。 興味深いことに、DNAはデジタルディスクやテープなどよりもはるかに安定しています。条件さえ整えば、DNAはヒトや有機体の骨の中に数十万年も留まることが出来ます。それを取り出せるようになって、数十万年前に死んだ生物のゲノムを研究することも可能になりました。(参考記事:「ゲノム編集でヒト受精卵を修復、米初、将来性は?」) 最初の転機は、2009年に訪れました。ネアンデルタール人の骨からDNAを抽出することに成功したのです。こうして私たちとは別の人類の全ゲノム配列が決定され、古生物学者の長年の謎が解明されま