九〇年代社会学/都市論の動向をめぐって | 若林幹夫 An Introduction to Books on Sociology: Urban Studies in the 90s | Wakabayashi Mikio しばしば語られるように、八〇年代は記号論やテクスト論、消費社会論的な都市論隆盛の時代であった。それは、八〇年代の日本の経済的好況=バブルの下での都市の消費社会化、記号の操作を媒介とする都市や都市空間それ自体の商品化とほぼ正確に対応していたと言うことができる。やはり八〇年代に流行した、明治・大正・昭和初期の「モダン都市生活」を余裕をもって回顧する「モダン都市論」も、経済成長の末に現われた景気の高原状態のうえで、現在の都市生活の正統性を過去に求めるという社会意識の現われであった。だが、その後のバブル崩壊と経済的停滞は、都市をめぐる視線を八〇年代的なバブルが覆っていた都市の表層