父が亡くなったあと、30数年にわたり一人暮らしを続けてきた母。続けたのではなく、続けてくれたのです。しかし、私たちが気づかぬうちに、認知症はゆっくりと進行していました。実家を整理し、遠く離れた私の家に同居することになったのが5年前のこと。その後、いくつかの事件があって、近くのグループホームに入居することになりましたが――。 Contents 30年間の一人暮らしの果てに 悲しい顔をすると悲しい顔に 作り笑顔が母の表情を変えた 初めて食べた塩なしおにぎり やがて家族が壊れていく過程 施設入居を決断したきっかけ 覚悟をすることと諦めること 30年間の一人暮らしの果てに 母「今日は、ホウレンソウと小松菜の胡麻和えを作るから」 私「それ、昨日の夜にも作ったでしょう」 母「そうだった?」 私「何度いっても、忘れるんだから」 実家に帰るたびに、 こんな会話が増えていきました。 父が亡くなってから 30