北朝鮮でスパイ教育を受け、44年前に密入国したとして韓国籍の男(67)が出入国管理法違反(不法在留)容疑で愛知県警に逮捕された。日本で家族を持ち、いつ強制送還されるかと苦しみ続けた日々。「捕まってほっとした。残り少ない人生だが新たなスタートを切りたい」。男は名古屋拘置所で取材に応じた。捜査当局への取材でわかった内容を踏まえ、男の半生をたどった。 「『行きたくない』と言ったが、取り囲まれて、抵抗できなかった。『必ず近いうちに日本に帰す』と言われ、仕方なく従った」 1964年、日本に渡った父母を追って貨物船で密入国し、父のいる愛知へ。67年、朝鮮総連関係者から「東京で働かないか」と声をかけられた。東京で会った男に「旅行に行こう」と誘われ、列車で青森県弘前市へ。タクシーで海岸に着いた。月のない夜。男はラジオのようなものに耳をあて、海原に向け懐中電灯を点滅させた。ゴムボートが海岸に近づき、「祖