家族で一緒に食事をとること──。子供を育てる日本人の親たちの多くが、その大切さを刷り込まれている。 僕もそう思っていた。 以前、犯罪に走った子供の施設を訪ねたことがある。所長はこんな話をした。 「入所したとき、家族で夕食を食べる光景を描かせるんです。描くことができる子供は大丈夫。でも、なかに白い画用紙の前で固まってしまう子がいる。そういう子供は心配なんです」 おそらく家族と一緒に夕食を食べたことがないのだ。いつも兄弟かひとりでテーブルに座っていた……。 教育評論家たちも、一緒に食事をとることの大切さを強調する。ちゃんとした家庭像である。 タイ人男性と結婚した日本人女性が帰国した。小学校に通うふたりの子供も一緒。そして日本の小学校に通いはじめた。 訊くと夫のタイ人との関係が悪いわけではないという。子供の教育……ということになるのだが、その女性の口調はなにかすっきりしない。平凡な表現を遣えば、