ケニアに、女性だけの小さな小さな共和国がある。25年前、男性から暴力被害を受けた女性たちが、故郷を逃げ出し、自分たちで共同体をつくったのだ。「国の支援など当てにしていられない」と自ら行動を起こし、自分たちの手で「女性が輝く社会」を実現させた。しかし、彼女たちのささやかな抵抗と成功に、既存社会は──。 「宿命」を断ち切るために 草木も生えない平原の真ん中に、木材やプラスチックで作られた10棟ほどの小屋が立っている。夜にはゾウやヒョウがやってくることも珍しくない。モプコリ村は、暮らすには過酷な環境だと誰もが思うだろう。だが、当の村人たちにとっては、平和な隠れ家なのだ。 「ここで暮らせてすごく幸せです。だって自由ですもの。ここには、私たちを縛るものは何もない。私たち自身が力を持っているんです」 ネピ・レレグウェニはそう言って微笑んだ。穏やかな目つきで、幸せそうにはにかむ彼女は、42歳にして村の長