北朝鮮粛川郡出身のイ・スダンさんは「ヒトミ」という日本式の名前で恥辱を受け、中国人「リ・ポンウィン」として人生を終えた。子どもを持つことができなかったイさんは晩年にアルツハイマーと統合失調症が重なり、赤ちゃんの人形を抱きながら過ごした。イさんは人形に「私と一緒に住もう」と話したりした。[写真 安世鴻] 主観的「意見」と客観的「事実」が混在する時、写真は「事実」の証拠として作用する。写真家の視線により証拠総量は変わるが、ドキュメンタリー写真の大部分は芸術よりは記録と証拠に忠実なメディアだ。こうした理由からドキュメンタリー写真はわれわれが目を背けていたり見ることができなかった事実に沿って不便な感情をも与える。本には老いて病んだおばあさん21人の写真が登場する。写真111枚が入った303ページの本は一見すると写真集だ。ページをめくるたびに写真がほぼ毎回登場する。関連情報がない他人にとってはもしか