2007年02月23日20:00 カテゴリ書評/画評/品評 書評 - キリンヤガ 本書はSFの形を取った寓話である。 キリンヤガ M. Resnick / 内田昌之訳 そして寓話の多くがそうであるように、本書もまたハッピーエンドとはなりえない。 本書「キリンヤガ」の主題は、「民族自決対個人の尊厳」ということになる。主人公コリバは、西洋の教育をたっぷり受けて育ち、そうしたが故に西洋的価値観に耐えられず、彼の民族であるキユク族のユートピアを宇宙に築こうとする。その名はキリンヤガ。キユク族の創造神、ンガイが鎮座する場所。かつてのキリンヤガであったケニヤ山は、この時代すでに都市化が進められており、そこにはンガイはもういないのだ。 小惑星キリンヤガにおいて、彼はムンデゥムグ--祈祷師として絶対的な権力を持っている。しかしその権力の源となっているのは、彼にのみに忠誠を尽くすコンピューターと、その先にあ