私は、日本のものづくり産業がこれから進む方向として、5年ほど前から「ことづくり」に向かうべきだと主張してきました。ことづくりとは、生み出したものによってでき上がる新たな生活や社会の様子まで、つくりあげていくことを指します。こうした新たなものづくりを、私は「もの・ことづくり」と呼んでいます。 ことづくりの例として、スマートグリッドが挙げられます。電力がかかわる、あらゆる場面を最適にすることで、街全体の電力の消費を抑えようという試みです。そこでは、太陽光発電や風力発電、電力網、住宅や工場などの建物、電気自動車、家電など、それぞれのシステムの中を最適にするだけでなく、それぞれのシステム同士を連携させることで、はじめて実現できることです。このように、ものづくりにとどまらず、ものを使って今までにない社会システムまでつくりあげることが、ことづくりです。 こうした主張を始めた当時から、日本のものづくり産