絵画の根源をめぐって 岡田 温司(京都大学) 津上さんからは「共感」をめぐるアクチュアルな倫理的・美学的考察が、また小田部さん からは新たな感性論の構築に向けて緻密な理論的考察が示されましたが、わたしの話は もっと軽くて大雑把なものですので、学会も最終日の最後で皆さんお疲れでしょうから、 どうぞ気軽にお聞きください。 最初に、「絵画とは何か」、あるいはもっと広く「イメージとは何か」というストレートな、 しかし困難な問いにアプローチするうえで手掛かりとなる、西洋の三つの神話からわたし の話をはじめたいと思います。もうよくご存知の方もいらっしゃるでしょうが、その三つ の神話とは、「影」と「痕跡」と「水鏡」にかかわるもので、それらがいわば絵画の起源となっ ている、というものです。まずはそれぞれの神話についてごく簡単に紹介し、続いて、現 代のわれわれがこれらの古い神話からいったい何を引き出す