言うまでもないことだが、1990年代に起こった大きな変化に対して、すべてのアメリカ企業がビジネスモデルの転換に成功したわけではない。失敗した企業の典型として、AT&Tを挙げることができる。 AT&Tは、電話を発明したグラハム・ベルが興した「ベル電話会社」を前身とし、電話通信網の運営に加えて研究開発と機器製造も行い、従業員数が100万人を超える史上最大の企業だった。 単に大きかっただけではない。同社のベル研究所は、ノーベル賞級の研究者を何人も擁する世界最先端の研究所だった。トランジスタを発明したのもこの研究所だ。60年代には、AT&TとIBMが人類の未来を開くと、世界の誰もが信じていた。また、温情的、家父長的、終身雇用的な雇用の仕組みで「マーベル」(ベルお母ちゃん)と呼ばれていた。この点でも、IBMと似ていた。 ところが、そのAT&Tが80年代に急速に衰退したのだ。その始まりは、米司法