のちに年を経て「美輪明宏」という名の妖怪モノノケとなるよりも、ずっと以前。 まだ一介の「化け物」に過ぎなかった丸山明宏というシャンソン歌手が繰り出した、 泥臭く力強くも、切なく心温まる渾身の一作。 男どもに混じって、負けじと肉体労働を生業として働く母親と、 家庭環境をはやされ苛められつつも、強く育つ主人公の立身出世を描く。 歌詞にも歌唱にも、とっつき易さや心地よさというものが皆無であるにもかかわらず このレコードは意外なほどの大ヒットとなったが、 「土方」という歌詞中のキーワードをやり玉に挙げられ、 道徳的な題材にもかかわらず、いわゆる「放送禁止曲」のレッテルを貼られてしまった。 それは、歌唱だけでなく作詞・作曲も手掛けた本人が 今でいうセクシャルマイノリティ、性的少数者という、当時の基準からすれば、 ゲテモノ、イロモノ、キワモノの扱いであったことが一番の原因だったのかもしれない。 ヒステ