ロシアのプーチン首相が5月11~13日に来日。12日、麻生首相との首脳会談が行われた。日露関係にとって最大の懸案の北方領土問題について進展があったかどうかは定かではないが、一方で、この間、わが国のエネルギー戦略の根幹に位置付けられる原子力政策の今後の在り方を示唆する2つの発表がなされた。12日の原子力平和利用に関する政府間協定(日露原子力協定)の締結、そして、同日の東芝とロシア国営原子力会社アトムエネルゴプロムとの濃縮ウラン製品事業に関する事業化構想の具体的検討に関する覚書の発表である。 日露原子力協定とは、日本とロシアが、平和利用を前提として、核物質や核関連技術の移転その他の協力を行うための法的枠組みを定めたもの。わが国の原子力政策にとって、今回の一連の発表は一体、何を意味し、今後、どこへ向かっていくのか? それを読み解くには、ここ数年の間に出現してきた次の二つのトレンドに注目する必要が
ロシアのプーチン首相の来日に合わせ、日本とロシア両政府が12日、日露原子力協定を締結した。これにより、日本企業による国産原子炉をはじめとした原子力発電ビジネスが大きく広がる可能性が出てきた。世界的に原子力発電需要が高まるなか、ロシアも多くの原発新設を計画しており、東芝や日立製作所、三菱重工業などにとって追い風になるのは間違いない。 ◆30基新設の可能性 今回の日露協定は、原子力発電技術の海外展開を加速したい日本と、技術を求めるロシアとの思惑が一致し、締結につながった。二階俊博経済産業相は、この日の閣議後の会見で「今まで政治的な理由もあり、なかなか手が届かなかったが、今はむしろロシア側が積極的な対応を示している」と述べ、原子力にからむ日露の関係強化に期待感を示した。 ロシアでは27基の原発が運転中だが、発電量に占める比率は16%にとどまる。ロシア政府は2020年に同比率を25〜2
筆者は去る7月13~18日、モスクワを訪問し、ロシア原子力産業の動向を中心に関係者のヒヤリングを行なった。我が国が、ロシアとの間で二国間の原子力協定締結交渉の開始で合意したのは昨年(2007)2月のこと。実は、7月の洞爺湖サミット中にも同協定に調印されるとの見方が有力だった。 筆者も、雑誌『諸君!』8月号掲載の論文「ロシア双頭体制は新資源帝国をめざす」(兵頭慎治・防衛研究所主任研究官との共著)の最後部で次ぎのように述べた。 ロシアは世界最大のウラン濃縮サービスの供給能力を持ち、今のところ他国から使用済み核燃料を引き受ける可能性のある唯一の国である。そうした自国の優位性を熟知するロシアは現在、イランを含む発展途上国向けの原子力協力を行う国際的な枠組み作りを主導している。その第1弾として、東シベリアのアンガルスクでの国際ウラン濃縮センター計画を推進している。ブッシュ政権も同計画を支持している。
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