HOME 書評 篠原雅武著『公共空間の政治理論』 人文書院2007 『図書新聞』2007年11月10日、5頁 橋本努 「空間とはなにか」――。これは、京都大学の間宮陽介先生が、ある年の大学院入試(修士課程)において出題された問題であるという。たまたまこの試験問題に挑んだという筆者は、その後「空間」論を専門領域と定め、「空間の政治理論」と題する博士論文を同大学へ提出したというのだから面白い。その論文を加筆修正して生まれた本書は、「空間」をめぐる政治の本質的な問題と向き合った力作だ。自前の思考営為によって、著者はこの領域で問題となる事柄を徹底的に悩み抜いている。その真摯な姿勢において、本書は「精神の格闘記」と呼ぶにふさわしいであろう。 この一〇年間、日本の大都市はいずれも、目まぐるしい変化を遂げてきた。高層マンションが乱立し、人々の生活は、都市の快適な居住空間のなかへと、ますます内閉しつつある