とある地方都市、母と兄との三人家族。物心がついた時には既に、母から厳しい「躾」という名の暴力を日常的に受けていた。 私には何かしらの、検査に引っかからない程度の発達の遅れがあったのだと思う。小学校へ入学する頃になっても、母が私に要求していることを理解できていなかった。自分がなぜ怒られているのか、私の何が悪いのかもわかっていなかった。 怒鳴られれば謝る。殴られれば謝る。ただそれだけ。反省なんてなかった。「母は正しく、私は間違っている。」それが私の、理解の全てだった。 年が離れた兄は、私に優しかったと記憶している。受験のストレスからか、一度だけ八つ当たりのように殴られたことはあるけど、それ以外に私を虐めたりすることはなかった。友達と遊ぶ時間を削って、私を家の外へ連れ出してくれることもあった。私は兄のことが好きだった。 同時に、私は心のどこかで「兄は私の味方ではない。」と思っていたかもしれない。