「あまり大きな声じゃ言えないけども、なぐさみ者っていうのかな。そういうのはあったよ。カヨさんっていうんだけどね。私が6つか7つくらいのときに、10くらい上だったね」 東京都青梅市。その中心部からさらに車で30分ほど入った山あいの小さな集落で、今年、米寿を迎えた山中時男さん(88)は、かつてこの地域に存在していたという『秘密』について、ゆっくりと語り始めた。 今を遡ること約80年前の昭和10年頃、この地域に住む人々の間では、みんなが知っているハズなのに、なぜかその存在について口にするのを憚るという、あるひとりの少女がいたという。名前はカヨ。山中さんの話によると、彼女は、今で言うところの知的障害を負っていたそうで、実際には20歳近かったにもかかわらず、まるで幼女のような言葉を話し、屈託のない笑顔を見せていたという。 「カヨさんはこのあたりでも、割りと貧しい家の子でね。器量は悪くなかったと思うん