ゆっくりだから見えてくる いつもと違う 旅の風景 平成19年度の岸田國士戯曲賞を32歳の若さで受賞した前田司郎氏。劇作家としてのみならず小説家としても高い評価を得ている前田氏が、初めて本格的にテレビのために脚本を書き下ろしたのが「お買い物」である。新進気鋭の劇作家がテレビドラマの題材に選んだのは、意外にも老夫婦の物語である。福島の農村から東京・渋谷へ向かう老夫婦の珍道中を、独特のユーモアと語り口で描き、歯切れよく、痛快なテンポのセリフのやりとりの後にじんわりと沁みてくる人生の哀感あふれる作品となった。若手作家が、ベテラン俳優とがっぷり四つに組んでお届けする、超スローな旅。 【ストーリー】 福島で暮らすおじいさん(久米明)と、おばあさん(渡辺美佐子)の元に1通のダイレクトメールが届く。東京で開かれる高級スチールカメラの見本市を知らせるものだ。カメラが趣味だった若かりし頃を思い出したおじ