【ボーダー その線を越える時 プロローグ(1)】 人類は「人工生命の創造」という“神の領域”に踏み出し始めた。SF(サイエンス・フィクション)の世界の話ではない。 米国の遺伝子学者、クレイグ・ベンターのチームは昨年、人工合成したゲノム(全遺伝情報)をもとに、完全な細菌を作りだした。関連記事「命」「性差」…消える境界 危険性と…「心に性別なんてない」 中性として生…記事本文の続き 「インフルエンザワクチンの開発期間を大幅に短縮」「地球温暖化対策の一環としてバイオ燃料を作り出す微生物の製造」「マラリアやエイズといった感染症の新薬の迅速な開発」…。新技術を使えば、こんな可能性も広がる。 「世界で初めて、コンピューターを親に持ち、自己複製できる種を作った」 ベンターはこう胸を張ったが、新技術は人類に多大な恩恵をもたらす可能性がある一方、バイオテロなどに悪用される危険性も併せ持つ。生命とは何か。善悪