突然、「この本めちゃくちゃ面白かったです。ジャケ買いして一気読みしました」というメールがHONZ宛てに届いた。送付元は、以前にもメールのやりとりをしたことのある、大変な読書家でHONZを応援して下さっている心臓血管外科医の望月先生である。確かにソソるカバー。面白い本ならではの「匂い」が、表紙からすでに漂っている。しかも望月先生のご推薦とあらば、読まねばなるまい。というわけで手に取ったのが本書である。 ヴィオラ奏者であった著者は、2003年のある日、渋谷の弦楽器店を訪れた。先客の小学校低学年の男の子が、古いショーケースを覗きこみ、一緒に来ていた母親に向かってこう言った。 「お母さん、こんなに小さなチェロがあるよ」 実は20年前、高校生だった著者は、上京し、初めて訪れた同店で、緊張に身を固くしながら同じショーケースを覗き込んでいた。しかし、この「小さなチェロ」の存在には気付かなかった。 ショー