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ブックマーク / natgeo.nikkeibp.co.jp (724)

  • ヘビやサソリによる毒死が激減、先端ゆくメキシコの抗毒研究

    メキシコ、オアハカ原産の毒サソリを手にのせる生物学者のシプリアノ・バルデラス・アルタミラノ氏。(PHOTOGRAPH BY MARA SANCHEZ RENERO) 世界保健機関(WHO)によると、毎年14万人近くが毒ヘビにかまれて命を落としており、その多くは抗毒血清があれば救うことができたという。2017年、WHOはヘビ咬傷を「顧みられない熱帯病」のリストに加えた。 そんななかメキシコは、ヘビ毒やサソリ毒による死者の数を激減させることに成功した。また同国は、これまでに十数種の抗毒血清を開発・改良し、ビオクロン研究所、ビルメックス、イノサン・バイオファーマの3社を通して世界各国に提供している。 メキシコはいかにして抗毒研究の先端におどり出ることができたのか。そこからは、生物毒による死者の多い途上国における悪循環を断ち切るヒントが見えてくる。

    ヘビやサソリによる毒死が激減、先端ゆくメキシコの抗毒研究
  • ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、宇宙空間での機体展開に成功

    宇宙空間での展開に成功したジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡の想像図。(ILLUSTRATION BY NASA) 2021年のクリスマスに打ち上げられたジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡が、最も難しいミッションである機体の展開作業を無事成功させた。折りたたんだ状態で宇宙へ打ち上げられた後、目的地を目指して移動しながら機体の各部位を展開させる作業は、万に一つの失敗も許されない危険なステップをいくつも踏む必要があった。 ウェッブ計画に携わる科学者やエンジニア、それを見守る宇宙マニアにとって、この15日間は緊張の連続だった。全ての段階を、一つずつ順番に、完璧にこなさなければならない。事前に地上で練習を重ねていたものの、実際に宇宙でどうなるかは予想がつかなかった。一カ所でも間違えば、始まったばかりのウェッブ計画は早々と終了してしまうかもしれなかった。しかし1月8日、主鏡の展開が成功したことによって、展開

    ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、宇宙空間での機体展開に成功
  • 世界の七不思議、千年働いた超巨大「アレクサンドリアの大灯台」

    高さ100メートルを超えるアレクサンドリアの大灯台には、プトレマイオス朝のファラオと女王をかたどった巨大な花崗岩の像が置かれていた。塔には巨大な白い石灰岩が使われ、当時はエジプトの太陽を浴びてまぶしく輝いていたことだろう。(JEAN-CLAUDE GOLVIN/MUSÉE DÉPARTEMENTAL ARLES ANTIQUE) 「世界の七不思議」の一つに数えられているアレクサンドリアの大灯台は、美しさと機能性を兼ね備え、何百年にもわたって船を安全に古代エジプトの港へ導く役割を果たしていた。そのおかげで、アレクサンドリアの街は古代世界における地中海交易の中心地として大きく発展した。(参考記事:「古代の人々があこがれた「世界の七不思議」」) アレクサンドリアは、マケドニア王国のアレクサンドロス大王によって、紀元前331年に築かれた港湾都市だ。ペルシアと戦い始めてからわずか3年で地中海の東側の

    世界の七不思議、千年働いた超巨大「アレクサンドリアの大灯台」
  • 3600年前の超巨大「ミノア噴火」、津波の犠牲者をついに発見

    19世紀に近くで噴火した時のティラ島(サントリーニ島)の様子。手前がティラ島で、カルデラの縁の一部だ。ここから160キロ以上離れた場所で、青銅器時代の噴火とそれによって引き起こされた津波の新たな証拠が見つかった。(COLOUR-PRINTED ENGRAVING VIA UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE/UIG/BRIDGEMAN IMAGES) 約3600年前の後期青銅器時代、エーゲ海の火山島が噴火し、破壊的な津波を引き起こした。その津波による犠牲者の遺骨が、最近になって、噴火したティラ火山(現在のサントリーニ島)から160キロ以上離れたトルコの海岸で初めて見つかり、12月27日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。 史上最大級の火山被害をもたらしたと推定されるこの「ミノア噴火」は、火山爆発指数で「超巨大」の7に区分され(最大指数は8)、その規

    3600年前の超巨大「ミノア噴火」、津波の犠牲者をついに発見
  • NASAの地球防衛実験、小天体に体当たりする探査機を打ち上げ

    小惑星ディモルフォス(左)に衝突しようとするNASAのDART探査機と、それを見守るイタリア宇宙機関のLICIAキューブ(右下)。この衝突により、ディディモス(右上)を周回するディモルフォスの軌道を変化させる予定だ。(IMAGE BY NASA/JOHNS HOPKINS, APL/STEVE GRIBBEN) 11月24日(米国時間の23日)、米国カリフォルニア州にあるバンデンバーグ宇宙軍基地から、NASA(米航空宇宙局)のDART(Double Asteroid Redirection Test:二重小惑星方向転換試験)探査機が打ち上げられた。全てがうまく行けば、DARTは太陽の周りを10カ月間旅した後、2022年9月27日(米国時間の26日)に、ディモルフォスという小さな天体に衝突することになっている。 直径160メートルのディモルフォスは、ディディモスという一回り大きな小惑星の周囲

    NASAの地球防衛実験、小天体に体当たりする探査機を打ち上げ
  • 木炭を運ぶ女性

    ナショナル ジオグラフィック英語版1911年11月号より(白黒写真に手で彩色)。 写真:WILLIAM W. CHAPIN 大きな俵を背負った女性が石畳で立ち止まり、こちらを振り返る。ここは日光の山中。俵の中身は木炭で、ここまで5キロ近く歩いてきた。さらに1.5キロほど離れた場所まで荷物を運び、その対価として、いくばくかの代金を受け取る。屈強な男性でも音を上げそうな重労働だが、女性はこの仕事に慣れているのか、軽々と運んでいるように見えたという。1911(明治44)年11月号の特集「私が垣間見た日」の1枚。 特集の筆者で撮影者のウィリアム・W・チェイピンは、米や材木を運ぶ人々にもレンズを向けた。当時の山村には車両に適した道がなく、「何から何まで人が背負って運ぶしかない」と伝えている。 2021年11月号 世界を驚かせた考古学の発見100/エチオピアの苦悩/南極の海の生命を守る/地球最南端の

    木炭を運ぶ女性
  • 2015年に小笠原沖で起きた余震、深さ751キロで世界最深だった

    2015年に小笠原諸島西方沖で発生した一連の地震は、地下数百キロで発生した超深発地震だった。(PHOTOGRAPH BY FLPA, ALAMY STOCK PHOTO) 2015年5月、小笠原諸島西方沖の地下600~700キロという深さで、奇妙な連続地震が発生した。ほとんどの地震は、地表から数十キロよりも浅い部分で起こるものだが、この地震はそれよりはるかに深かった。こうした地下深くの場所では、激しい高温と高圧のため岩石は割れることがなく、地震は起こりにくいと考えられていた。(参考記事:「史上最長、32年間続いた「ゆっくり地震」を解明」) 最初に起こった地震はマグニチュード7.9(気象庁マグニチュードは8.1)、震源の深さは680キロを記録した。これ自体、世界でもまれにみる超深発地震だが、続いて起こった余震の一つが、観測史上世界最深だった可能性があることが明らかになった。この発見は、202

    2015年に小笠原沖で起きた余震、深さ751キロで世界最深だった
  • キツネザルの歌で「リズムパターン」を発見、人間と鳥以外で初

    歌うキツネザルとして知られるインドリの歌で、人間以外の哺乳類で初めて「カテゴリカルリズム」という音楽的なパターンが見つかった。写真は、マダガスカルのアンダジブ・マンタディア国立公園のインドリ。(PHOTOGRAPH BY JASON EDWARDS, NAT GEO IMAGE COLLECTION) マダガスカル島に暮らす歌うキツネザルのインドリ(Indri indri)の研究者らが、数百もの歌を分析した結果、2つの音の長さが一定の間隔になるリズムが使われていることを発見した。これまで、こうしたリズムを駆使して歌うのは人間の他には鳥類だけとされ、人間以外の哺乳類で発見されたのは初めてだ。 「インドリは、歌で意思の疎通をする唯一のキツネザルです」と、イタリア、トリノ大学の霊長類学者キアラ・デ・グレゴリオ氏は言う。氏が筆頭著者を務めた論文は、10月25日付けで学術誌「Current Biol

    キツネザルの歌で「リズムパターン」を発見、人間と鳥以外で初
  • 2800万光年離れた銀河におそらく惑星を発見、史上最遠

    渦巻銀河とX線連星系「M51-ULS-1」。(Source: Chandra X-Ray Observatory) はるか2800万光年離れた銀河に、土星サイズの惑星が潜んでいるらしいとする研究成果が10月25日、学術誌「Nature Astronomy」に発表された。確認されれば、これまで発見された中で最も遠くの惑星となる。 2800万年前、遠く離れた渦巻銀河で、青く若い恒星が苦境に陥っていた。 この恒星は、強力なパートナーの天体(おそらくはブラックホールか中性子星)との連星系だったが、パートナーの重力は極めて強く、若い恒星の外側を吸収していった。恒星からプラズマが引き剥がされると、太陽の100万倍もの強さのX線が放出された。(参考記事:「星をべる中性子星のX線フレアを観測」) その後、X線で輝くこの星の手前を何物かが通過し、われわれの視界から数時間にわたってこの星の光を遮った。 それ

    2800万光年離れた銀河におそらく惑星を発見、史上最遠
  • 1億年前のカニの化石を発見、細部までありのまま、琥珀の中に

    琥珀に閉じ込められているのは、知られている限り最も早く海を離れたカニだ。カニが海から淡水や陸に移動した過程の解明につながる可能性がある。(PHOTOGRAPH BY LIDA XING) 1億年前のカニの化石が見つかった。ミャンマー産の琥珀(こはく)に閉じ込められていたもので、関節のある脚、爪、複眼、えらまで確認できる保存状態は「驚異的」だと、10月20日付けで学術誌「Science Advances」に論文を発表した米エール大学の古生物学者ハビエル・ルケ氏は言う。 おかげでルケ氏らは、現存するカニのグループ「真短尾群(Eubrachyura)」に属する新種だと突き止め、「クレタプサラ・アタナタ(Cretapsara athanata)」と命名した。クレタプサラは海にすまない非海生のカニとしては最古の可能性があり、カニが海を離れた進化の過程を知る手掛かりになると研究チームは考えている。「琥

    1億年前のカニの化石を発見、細部までありのまま、琥珀の中に
  • バイキング、西暦1021年には北米定住、太陽嵐から解明

    バイキングは今からちょうど1000年前の西暦1021年にはアメリカ大陸に進出していたようだ。(STAINED GLASS BY EDWARD COLEY BURNE-JONES VIA DELAWARE ART MUSEUM / BRIDGEMAN IMAGES) 西暦993年、太陽の表面で激しい活動が起き、膨大な量の宇宙線が放出された。いわゆる太陽嵐だ。この出来事が決め手となり、今回、バイキングがアメリカ大陸にいた正確な年が特定できた。 今から50年以上前、カナダのニューファンドランド島のランス・オ・メドー遺跡でバイキングの集落が発見された。以降、アメリカ大陸に最初に到達したヨーロッパ人はバイキングの船乗りであるという説は、ほとんどの学者に受け入れられている。 バイキングが、西暦700年代後半から1100年頃にかけて北の海を駆け巡っていたことはわかっている。しかし、彼らが「ヴィンランド」

    バイキング、西暦1021年には北米定住、太陽嵐から解明
  • 20数億年前に地球の酸素急増の謎、1日が長くなったから? 新説

    米五大湖のひとつヒューロン湖の陥没穴「ミドルアイランド・シンクホール」を探索するダイバー。ここの微生物マットは、約20億年前の地球の海のものと似ていると見られ、今回の研究に使われた。(PHOTOGRAPH BY NOAA, THUNDER BAY NATIONAL MARINE SANCTUARY) 地球の大気には酸素がおよそ20%含まれている。多くの生命が生きていけるのはそのおかげだ。しかし、できたばかりの46億年前の地球の大気にはほとんど酸素が含まれておらず、24〜22億年前に急激に増えたことが地質学的な記録からわかっている。 その理由は、光合成を行うシアノバクテリア(藍色細菌)が海で増えたからと考えられている。だが、光合成を行う微生物はもっと前から地球に存在しており、だとしたらなぜこの時期に大量に酸素が増え始めたのかは大きな謎だった。 このたび、その謎にまつわる驚くべき新説が発表され

    20数億年前に地球の酸素急増の謎、1日が長くなったから? 新説
  • 凍結ミイラ「アイスマン」発見から30年、明らかになった10の事実

    アイスマン「エッツィ」の復元像。エッツィは約5200年前、ヨーロッパアルプスで生活していた。1991年9月19日、ドイツ人の登山者によって、自然環境下でミイラ化した遺体が発見された。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 今から30年前の1991年9月、オーストリアとイタリアの国境の山岳地帯で、ヨーロッパで最も有名なミイラが発見された。5000年以上前の凍結ミイラ「アイスマン」だ。 標高約3200メートルの湖のそばの氷原で、うつぶせの状態で横たわっていたこのミイラは、発見地エッツタール・アルプスから「エッツィ」と名付けられ、たちまち世界の注目を集めた。新石器時代のヨーロッパを生きた彼の生活や壮絶な最期は、数々のやドキュメンタリーに描かれ、長編映画まで制作された。 エッツィは現在、イタリア、ボルツァーノの南チロル考古学博

    凍結ミイラ「アイスマン」発見から30年、明らかになった10の事実
  • 単細胞性の酵母が試験管で「巨大な多細胞体」に進化、驚きの実験

    細胞が40万個以上に増殖した酵母のクラスター。圧力を加えると、写真のように枝分かれした小さな細胞の塊になった。(PHOTOGRAPH BY OZAN BOZDAG) 生命はいかにして、単細胞から始まり、今のようなかくも美しく複雑な生物へと進化したのだろうか。そもそも細胞は、どのようにして集まり、互いに協力することを学び、数億から数兆個もの細胞から成る有機体を形成するようになったのだろうか。(参考記事:「5.7億年前、生物たちはなぜ複雑になったのか」) その答えはまだ見つかっていないが、米ジョージア工科大学による最新の実験結果が、大きな手掛かりを与えてくれるかもしれない。同大学の研究チームは、試験管の中で来は単細胞性の酵母が肉眼で見えるほど巨大なクラスター(集合体)にまで進化する様子を観察し、複雑な多細胞構造の起源を探る研究への道筋をつけた。 実験で得られた酵母のクラスターは大きさが直径2

    単細胞性の酵母が試験管で「巨大な多細胞体」に進化、驚きの実験
  • 氷河に暮らす謎だらけのミミズ、氷河とともに消える恐れ

    米国ワシントン州にあるレーニア山南面のパラダイス氷河を覆うコオリミミズ。コオリミミズは0℃で繁栄する科学上の「パラドックス」だ。(PHOTOGRAPH BY SCOTT HOTALING) 氷河は一見、生命のいない不毛な氷の塊だ。しかし、目に映るものがすべてではない。氷河には多数の小さな生物が暮らし、豊かな生態系を形づくっている。 コオリミミズ(Mesenchytraeus solifugus)は、北米大陸西部の氷河で最も目立つ生物だ。体長は1センチを上回る程度で、デンタルフロスくらい細く、米国の太平洋岸北西部、カナダのブリティッシュ・コロンビア州、米国アラスカ州の氷河に点在する。 この小さな黒いミミズは夏の午後から夜にかけて氷上に大量に現れ、藻類や微生物などをべる。そして、夜明けとともに氷の中に潜り、冬が来ると氷の奥深くに姿を消す。 ミミズの遠い仲間であるコオリミミズは、雪や氷の中の冷

    氷河に暮らす謎だらけのミミズ、氷河とともに消える恐れ
  • 小惑星ベンヌ、地球に衝突する確率が上昇、なぜ?

    小惑星ベンヌ。ベンヌが今後300年以内に地球に衝突する可能性は依然として低いものの、米航空宇宙局(NASA)の科学者たちは、その確率がこれまで考えられていたよりもわずかに高いことを明らかにした。(VISUALIZATION BY KEL ELKINS, NASA GODDARD SPACE FLIGHT CENTER) コマのような形をした岩だらけの小惑星ベンヌは、何億年もの間、ほぼひとりぼっちで太陽の周りを回ってきた。直径約500mのベンヌが地球に差し迫った脅威を与えることはない。だが数百年後には、地球に衝突する可能性がわずかにある。 8月10日付けで学術誌「Icarus」に掲載された論文で、科学者たちはまず米航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「オシリス・レックス」のデータを用いてベンヌの軌道を正確に計算した。さらに、現在から西暦2300年までについて、地球に衝突する危険性を分析した結

    小惑星ベンヌ、地球に衝突する確率が上昇、なぜ?
  • タリバンがアフガニスタン掌握、文化財の破壊は繰り返されるのか

    雑誌ナショナル ジオグラフィック日版2021年9月号(8月30日発売)で、タリバンが勢力を拡大するアフガニスタンを取材した特集「暗雲のアフガニスタン」を掲載します。 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが首都カブールに進攻し、大統領府を掌握した。不意を突かれた同国の博物館学芸員や考古学者は、遺跡や遺物を守るために奔走している。タリバンの支配地域にある文化財の運命はまだ不透明だ。 「これほど早く展開するとは思っていませんでした」と、カブールにあるアフガニスタン考古学研究所を率いるヌール・アガ・ヌーリ氏は語る。当局はヘラートやカンダハルなどから遺物を輸送して保管するつもりだったが、アフガニスタン政府の突然の崩壊により、それもできなくなった。(参考記事:「アフガニスタン 輝ける至宝」) タリバンがカブールを掌握した今、アフガニスタン国立博物館にある8万点以上の収蔵品が危険にさらされている。

    タリバンがアフガニスタン掌握、文化財の破壊は繰り返されるのか
  • イカの遺伝子を編集して脳の謎に挑む科学者たち

    巨大な神経線維をもつアメリカケンサキイカ(Doryteuthis pealeii)は、古くから神経科学研究において重要な役割を果たしてきた。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 米国マサチューセッツ州沖で捕れるアメリカケンサキイカ(Doryteuthis pealeii)は、100年近く前から神経や脳の研究で非常に重要な役割を果たしてきた。2020年、その研究が大きな成果を上げた。近くのウッズホール海洋生物学研究所が、CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)というゲノム編集技術を使って、アメリカケンサキイカの遺伝子を欠損(ノックアウト)させることに成功したのだ。 イカ・タコなどの頭足類がもつ能力は、イカの皮膚細胞の色変化から、コウイカのオスが求愛時にメスに擬態する能力、タコの記憶力や学習能力まで、地球のものと

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  • 古代の超大陸の陸塊が見つかる、ニュージーランド

    ニュージーランドは、フィヨルドランド国立公園(写真)をはじめとする驚異的な地質景観に恵まれている。こうした景観は、謎に包まれた8番目の大陸「ジーランディア」のほんの一部にすぎない。このほど、ニュージーランドの東海岸の地下に古代の超大陸の陸塊が隠されていたことが明らかになり、ジーランディアの複雑な過去を解き明かすカギとなることが期待されている。(PHOTOGRAPH WESTEND61 GMBH, ALAMY STOCK PHOTO) 南太平洋に、マオリ語で「テ・リウ・ア・マウイ」と呼ばれる失われた第8の大陸「ジーランディア」が隠れている。現在、約490万平方キロメートルにおよぶジーランディアの大半が海底下にあり、ニュージーランドの島々は海上に突き出たこの大陸の一部だ。 ジーランディアは最近になってその存在が科学者たちに認められた。これまで知られている中で、最も多くの部分が海中にあり、最も薄

    古代の超大陸の陸塊が見つかる、ニュージーランド
  • 生命体がいないと見られる土壌が南極で見つかる、初

    土壌調査チームの研究者2人が南極のシャクルトン氷河地域でサンプル採取に向かう。 (PHOTOGRAPH BY NOAH FIERER) 生命体がまったくいないと見られる土壌が南極大陸で見つかった。地球の表面では初めての報告だ。採取場所は、南極点から約480キロの内陸部にある、吹きさらしの2つの険しい山の尾根だ。 「微生物はたくましく、どこでも生存できると考えられてきました」と、土壌を調査した米コロラド大学ボルダー校の微生物生態学者ノア・フィアラー氏は話す。単細胞生物は、93℃を超える熱水噴出孔でも、南極の厚さ800メートルもの氷の下にある湖でも、さらには高度3万7000メートルの地球の成層圏でも生きているのが見つかっている。(参考記事:「地球最深マリアナ海溝で微生物の群集を発見か」) だが、南極から採取した土壌のなかには、フィアラー氏と氏が指導する博士課程の学生ニコラス・ドラゴネ氏が1年を

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