あわてんぼうの サンタクロース クリスマス前に やってきた いそいで リンリンリン いそいで リンリンリン ならしておくれよ かねを……。 クリスマスが近づくと街のあちこちから、この滑稽なサンタにぴったりのメロディーが聞こえてくる。 だけどいつも、その楽しげなメロディーが私の耳に入るのは、自転車で夜の仕事へ向かう途中だけだった。 昼間の仕事が終わると一度帰宅し、ご飯を食べる暇も無く、シャワーと化粧だけを済ませ、夜の仕事へ向かう。帰る頃には、あんなに賑やかだった街はどこかへ消えてしまい、もうどこからも、あの楽しげなメロディーは聞こえて来ない。だけど、街の灯りがすっかり消えてしまうわけじゃない。普段は頼りない、途切れ途切れの街灯だけの帰り道。その道もクリスマス前だけは、家々の壁や樹木に飾られた虹色のイルミネーションが加わり、賑やかだ。 寒風が、自転車で家路を急ぐ私の頬を、音を立てて切り去ってい
突然、助手席のドアが開いた。 中から、誰かが降りてくる様子はない。止まったままの車。 通行人達は皆、見ないふりをして通り過ぎて行く。誰が見ても、普通の人間が乗る車じゃないからだ。乗っているのは、ヤクザか。そうでなければ、どこかのボンボンか。どちらにしろ、街中のこんな所に堂々と車を横付けする様な人に関わって、良い事なんかない。 たまたまそこに立っていた梓は、シルバーの車体が反射している眩しい太陽の光に目を細めながら、ぼんやり眺めていた。もっとも、梓がぼんやりしているのは、いつもの事だけれど。 何? この車。なんでこんな所でドアを開けたまま、止まってるの? 車はサッパリの私でも知ってる。この車、外車の中でも、特別高いやつだ。 どんな人が乗ってるんだろう? 中をこっそり、覗き見してみようかと思ったその時。運転席側の窓から上半身を乗り出した男が、梓に手を振りながら言った。 「お待たせ! ごめんね、
子供の頃は知りもしなかった、思いもしなかった事って、多いよね。それに、大人になってから、大人に騙されてた! って気付く事も。 大事な事は、それが良い事でも悪い事でも、正直に、子供の頃からしっかり教えておくべきだよね。なのに今は、本当の事を隠して、子供を騙して誤魔化しちゃう。そういう親が多い。だから子供は、変な偏見持っちゃって、物事を正しく見れなくなっちゃう。 こんなんじゃ、日本の将来は暗いよ……。 日本の将来って言えば、あの話。あれ、大人でも知らない人が多いみたいだけど。 内閣総理大臣っているでしょ。子供がなりたい職業NO.1の。え? 今は違うの? まあ、うちは子供が居ないから、そんな事はどうでもいいけど。で、その総理大臣。 敗戦以降の歴代総理大臣って、アメリカ製の機械だって知ってた? 電池で動いてるんだよ。 今ってほら、エコの時代なんだから、太陽光発電にしなよ! せめて、充電して何度も使
あわてんぼうの サンタクロース クリスマス前に やってきた いそいで リンリンリン いそいで リンリンリン ならしておくれよ かねを……。 クリスマスが近づくと街のあちこちから、この滑稽なサンタにぴったりのメロディーが聞こえてくる。 だけどいつも、その楽しげなメロディーが私の耳に入るのは、自転車で夜の仕事へ向かう途中だけだった。 昼間の仕事が終わると一度帰宅し、ご飯を食べる暇も無く、シャワーと化粧だけを済ませ、夜の仕事へ向かう。帰る頃には、あんなに賑やかだった街はどこかへ消えてしまい、もうどこからも、あの楽しげなメロディーは聞こえて来ない。だけど、街の灯りがすっかり消えてしまうわけじゃない。普段は頼りない、途切れ途切れの街灯だけの帰り道。その道もクリスマス前だけは、家々の壁や樹木に飾られた虹色のイルミネーションが加わり、賑やかだ。 寒風が、自転車で家路を急ぐ私の頬を、音を立てて切り去ってい
昨年の夏、子供達を連れて山へ行った帰りの事です。 目的地だった山には子供向けの遊具や水遊び用の浅い池があり、子供達はおおはしゃぎでした。一日中、それに付き合わされた私も、もうクタクタです。 帰りの車が発進すると同時に、子供達は眠りに就きました。助手席の妻も、ウツラウツラしています。 山道の割には急カーブなど無く、退屈な運転に、私も今にも眠ってしまいそうになっていました。 「高速に乗る前に、どこかで一服して目覚まししないと危ないなー」ちょうどそんな事を考えていた時です。 道の駅のようなものが目に入りました。既に陽が落ちかけていましたが、灯りがついています。どうやら、まだ営業しているようです。私は迷わず、車を乗り入れました。 そこは普通の道の駅ではなく、廃校になった小学校を利用した、ちょっとした博物館的な要素もある所でした。 グズる子供達を無理矢理起こし、中に入ります。 廊下が向こうまで続き、
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