「もうダメだ」そう思った。特別派手に転んだわけではないけれど、久しぶりの転倒に動転した。転がるように倒れ、気付けば目の前には地面があった。 「あ、転んだのか」そう実感するまでに間があった。自分の状態を確認する前に自分が今どこにいるのかが気になった。顔をあげてみると、ずっと遠くに光り輝く場所が見えた。それまでの道も所々でキラキラした光が溢れている。 ふと人の気配を感じて視線を動かす。彼だった、と思う。顔が、体の輪郭が、全体にぼんやりしていてハッキリとはわからない。起き上がらせてくれるのだろうか、やや屈んで手を差し伸べている。私がその手を取ろうか迷っていると、彼はまた歩き出した。 いつもそうだ、と後姿を見ながら思った。彼は手を貸そうとしてはくれるけれど、それが下手くそなのだ。「大丈夫?どうしたの?」と言って手を差し出してはくれるけれど、その手に捕まることがどうも出来ないのだ。手に手を重ねればい