著者は私より6歳年長の先輩ながらさながら同時代記。 常夏の島「徳之島」出生ながら、なぜか"雪山"姓の著者、復帰前の奄美から船酔いしながらのポンポン船に乗っての沖縄渡航、そして上京後の創業、埼玉居住に加え、つい先月、私が名瀬から古仁屋への帰郷路、油井岳から眺めた瀬戸内湾の眺望に感激した同じ経験を数十年前になさっている類似軌跡。しかし、違いも大きい。 著者は高卒も半ばに、喫茶店、キャバレーボーイから商社勤務と10以上の転職、転移。そして額縁、アート絵画製造会社創業と波乱万丈のキャリア。しかも、ご尊父は奄美、沖縄で遺産浪費、起業、破産、借金暮らし。こうした父親を持ち、水商売、風俗営業転々すると人を嫉み、世を恨むのが常ですが、著者は父親の行跡を感情抜きに淡々と綴る。 そればかりか最も驚くのは早くからいかなる状況、環境下でも小説を手放さず、自らも同人誌に投稿する一方、奄美では島尾敏男を沖縄では霜多正