「10年間でみなさんの年収は150万円増えます」──安倍首相は街頭演説やテレビ出演で国民にそうバラ色の夢を振りまいている。 そんな言葉を真に受けたら馬鹿を見る。安倍首相の年収アップ論にはそもそも大きな誤魔化しがあるからだ。 52年前、時の池田勇人・首相は、「10年間で給料を2倍にする。できなければ政治家はやめる」と国民に約束し、高度成長期の波に乗ってそれは実現した。 だが、安倍政権が成長戦略で目標に掲げたのは、「年収」ではなく、「1人あたりの国民総所得」(GNI)を10年後に150万円増やすというもの。これは現実には、国民の収入増加を意味しない。 「アホノミクス」の命名者である、同志社大学大学院ビジネス研究科・浜矩子(のりこ)教授はその見え透いた騙し方が「アホ」だという。 「国民総所得は『国民の給与所得』とは全く別の指標で、企業の利益や政府の公共投資が含まれる。たとえば企業が社員のクビを切