これは過去数十年間で、最も論議を呼ぶ政治理念かもしれない。「スイスの合法的居住者全てにベーシック・インカム(基本所得)を無条件で給付する」というイニシアチブ(国民発議)を、運動家たちが街頭で市民に呼びかけている。国民投票に必要な数の署名がすでに集まったという。 「まったくのナンセンスだ」と中年の男性は、つぶやきながらバーゼル駅の入口へ急いだ。これは5月末、クリップボードを持った若い運動家が署名を求めて話しかけたときのことだ。ベーシック・インカム実現へのイニシアチブを立ち上げたのは、大きな政治団体から何の後押しもない一般市民のグループだ。 このイニシアチブを唱える運動家は、以下の3点について討論するよう市民に呼びかける。まず労働の価値について、さらに貧富の差が拡大する今の社会について、最後にスイスの合法的居住者に対し月額2500フラン(約26万円)のベーシック・インカムを無条件で給付すること