先日、出張のついでに実家へ帰ったときに、母が「犬を飼いたい」といっていた。 私が大学を卒業して社会人になり、浪人生だった弟が大学生になり、同時に子どもが二人とも家からいなくなってしまったので、手持ち無沙汰になったらしい。この2年、庭いじりにたいそう精を出したと見えて、冬でも花が咲いているのだった。 父は秋に定年を迎えたのに、相変わらず毎日のように会社へ出勤している。ただでさえ少なかった給料が、もっと減ってしまったけれども、働かないよりはましだという考えらしい。さすがに、私の仕送りを弟の学費にするのはプライドが許さないのだろう。……なんて偉そうに書いてみたけれど、月に6~8万円では何にも足りていない。実直な父が青二才に稼ぎを任せるはずがなかった。 さて。 犬は、ていねいに飼えば主人に忠実に育つ。いつも温かく、たいへんかわいい。家にいても何一つ役に立たなかったぐうたら息子より、よほど親孝行する