首相の安倍晋三は8月28日の会見で、「総裁を辞めていく立場で、私から次の総裁選に影響力を行使しようとは考えていない。そうすべきでもない」と語った。しかし安倍は6月以降、悪化する健康状態をにらみつつ、後継を選ぶシナリオを描いていた。そこには2007年の第1次政権で批判された「政権投げ出し」の二の舞を演じたくはないとの強い思いがあった。安倍の意向を踏まえつつ、この総裁選の荒波を巧みに乗りこなしたのは、財務相兼副総理の麻生太郎、幹事長の二階俊博、そして自ら総裁候補に名乗りを上げた官房長官の菅義偉の3人だった。 時は3カ月前にさかのぼる。 「麻生さんにお願いしたい」と語った安倍 6月13日。安倍は東京・信濃町の慶応大学病院で人間ドックを受診した。官邸広報室は「半年に一度受けている定期的な受診」とメディアに説明したが、すでに安倍は体調に異変を感じていた。退陣会見で安倍は「6月の定期健診で(潰瘍性大腸