大丸百貨店は、18世紀初頭創業の呉服店をルーツに持ち、近畿に地盤を置く名門百貨店である。心斎橋店は戦前の百貨店建築では、その豪華において横綱クラスと言われる近代建築である。2003年には近代建築の記録と保存を目的とする国際学術組織「DOCOMOMO」(88年設立)に世界水準の建築として認定されている(当研究会からも文化財選定についての検討を要望している)。 この建築を見るとき、戦後すぐの焼け野原の中に残った街の様子を写した写真を思い出す。昭和50年代ごろまで戦火で焼け残った煉瓦造り、鉄筋コンクリートの建物は修理して使われていたが、現在では建て替えられている。 そんな中で大丸心斎橋店は、木造が焼失した後、大正14年に心斎橋筋側が、昭和8年に御堂筋側が地下鉄の開通に合わせて完成した。設計はヴォーリズ建築事務所である(宣教師で建築家の米国人ヴォーリズは終戦工作にも尽力したと言われている)。 外観