福神漬けを添えたカレーなのか、カレーに添えられた福神漬けなのかわからなくなるほどに、彼女のカレーは真っ赤だった。福神漬けを作った人も決してこのような食べ方を推奨しないと思うのだけど、だからと言ってそれが法に触れるわけではない。犯罪的に醜悪な見た目になってしまったカレーは、しかしまだぎりぎり犯罪ではなかった。 「おいしいかい?」 「おいしいと思うのか?」彼女はなぜそんなことを聞くのかといわんばかりの顔をした。「学食のカレーをおいしく感じられるようになったらいよいよ終わりだという気がするな」 おいしくないのはカレーと福神漬けのどちらなのかを訊ねようとして思いとどまった。どうせ返答は両方に決まっている。決まっていることを省略しつづければ人類はきっと滅亡するに違いないけれど、何もかも省略されない世界でわずらわしさにわずらわされていきるよりはそっちの方がよっぽど幸せだろう。 「なにが終わる?