忘れたくない風景を堆積させること、をテーマに制作を続けています。 そういう風景に出会うと、まずはスケッチを繰り返します。 何枚も描くうちにシンプルな構図を見つけ、染め始め、縫い始めます。 染める、とは、染料が布の奥に深く染み入るのを待つことです。染み入るとき、時間の流れがそこに深く浸透していくような印象があります。布や染料の性質、水の動き、糊や蝋など防染剤の剥落や亀裂により、はじめのシンプルな構図に予期せぬ揺らぎや滲みが生まれ、確かに見た感動を含みながらも、より豊かな風景と出会えることを期待しています。 縫うこと。刺繍をするというよりも、染まった布から新たな色や組織を引き出すというイメージを持っています。また、縫うことは何かをそこに留める、ということだと感じます。 染め と 縫い を交互に行いながら、一枚の布の上に、色彩と組織の層を成す。 その層にモチーフが過ごしてきた時の流れが含まれてい